女坑主 感想

少女地獄収録「女坑主」を読みました。

 

この作品を読んで、改めて夢野先生はキャラのたて方が上手いなと思いました。

特に維倉門太郎君が良いですね。読めば読むほど維倉門太郎が好きになります。

 すごい素直でかわいい青年です。

若くしてこの世に絶望しきっており、自分の命を早く捨てたがっているのも良いですね。

あと眉香子未亡人から逃げるシーンではすごい男の子らしさが出てるんですけど、その後に女中との接し方が紳士的で落ち着いているのがグッと来ますね。最高です。

 

四人に囲まれてから未亡人と2人きりになって、「死にたくても死ねないようにして差し上げるって申しましたことおわかりになりまして?」と言うまで何も喋らないところもたまりません。

この黙りこくっている間、何を考えていたのか、どういう表情で話を聞いていたのか。それを考えるだけでワクワクします。

唇から血がふき出るなんて余っ程悔しかったんでしょう。かなりの負けず嫌いっぽいですよね。最後の最後で未亡人が「あなたみたいな可愛いお人形さんに殺されるなら本望」と言っているのもなめられていて中々悔しいだろうなぁと思います。プライドも高そうだし地味に傷ついてそうですよね。未亡人容赦ないな…

 

話が行ったり来たりで申し訳ないんですが、最初の方で未亡人と維倉青年のたわいもない会話は見てて楽しいんですけど、段々話しているうちにお互いのことを探り探りに話しているのも面白いです。

「恋愛なんて……恋愛なんて……ハハハ。恋愛なんて何でもないじゃないですか。ほんの一時の欲望じゃないですか。永遠の愛なんてものは男と女とが都合によって……お互いに許し合いましょうね……といった口約束みたいなもんじゃないですか。お金のかからない遊蕩じゃないですか」
「まあ。ヒドイことをいうのね」
「当り前ですよ。この世の中はソンナ様な神秘めかした嘘言ばっかりでみちみちているんですよ。だから何もかもブチ壊してみたくなるのです。何もない空からっぽの真実の世界に返してみたくなるのです」

この会話を見ていると維倉青年の話はあながち間違ってはないとは思いますが、正論では無いかなぁという感じですね。

この考えがあったからこそ特攻なんて出来たんですよね。

もう一つ好きな会話があるんですが、

「あるわ。論より証拠、貴方に死ぬのをイヤにならせて見せましょうか」
「ええ。どうぞ……」
「きっと……よござんすか」
「しかし……しかしそれは一時のことでしょうよ。明日になったら僕はまたキット死にたくなるんですよ。今までに何度も何度も体験しているんですからね。ハハハハ」

ここ。ここです。

何処までも救えない青年なんだって思います。冷めてるなぁ。

女坑主に別ルートがあるなら維倉青年には素敵な恋愛して欲しいなって思っちゃいますね…。

誰か救ってあげてってなりますね。シクシク…

 

全体の感想としては、自分も維倉青年と同じく未亡人に騙されっぱなしでした。流石銀幕スターだっただけありますね。

でも逆に維倉青年の話を聞き、悲観している時は未亡人の方に感情移入しました。

ハラハラして面白かったです。

維倉青年の価値観も色々考えさせられることがあったし、夢野先生の未亡人に対する体の表現が凄いなぁと思いました。文章だけで艶めかしさや色気が感じ取れました。

 

あと、夢野先生の「創作人物の名前について」を読んだんですけどやっぱり名前に関してすごい思い入れがある人だと思いました。

「何んでもない」の主人公、姫草ユリ子も名前からして美しさや儚さが出ていて素晴らしいと思います。「女坑主」の新張眉香子は色気が漂っていて、ユリ子よりも若干大人っぽさがある名前ですね。やっぱり名前は実在人物だろうが創作人物だろうが大切だと思いました。