少女地獄 感想

少女地獄と言いつつも、その中の「何んでも無い」の感想です。

何回言うんだよって思うかもしれないですが、まず夢野作品の登場人物って名前がすっごい良い。今回も良かったです。「姫草ユリ子」って一文字一文字清潔感がありますよね。名前だけでも綺麗で儚くて愛嬌のある可愛らしい小娘だってひしひしと伝わってくるし、本当に完璧だと思う。この「姫草ユリ子」という名前を親から名付けられたんじゃなくて、ユリ子自身が決めたって言うのも あ〜ユリ子らしいな〜って。こんな名前って赤ちゃんの時点で付けられないじゃないですか。ある意味ユリ子だけの特権ですよね。

 

この作品は書簡体でほぼ書かれてて、遺書とか臼杵先生の手紙がそのまんま作品の一部として組み入れられてるの面白いなって思います。

ユリ子の遺書に書かれた日付けと、ユリ子がうそをつくと言われている日付。この二つがほぼ一緒なんですよね。ユリ子が死んだっていう事実はあるんですけど、やっぱり死さえもユリ子の嘘だと思ってしまいます。実は今もどこかでユリ子が生き続けている可能性も無いとは言えないってことですよね……

それにユリ子の遺書って全体的に嘘をついたことを否定してるんですよね。清々しいくらいしらばっくれてる。年がバレた後でも自分のことを少女と貫き通すのがすごいユリ子って感じ。遺書でも自分が美しい少女でいたいというのがあるんでしょう。死んでしまえば歳をとらず、永遠に少女のままの姫草ユリ子でいられますしね。

死因も遺書と実際では違いますね。あれはどういう意図で…って思います。本当これだけはよく分かりませんでした。

でも、死ぬ間際の最後の最後まで嘘をつき続けるって結構狂気ですよ…ユリ子……

 

 

 

そして話の最後は臼杵先生の手紙で〆られるんですが、

彼女は実に、何でもない事に苦しんで、何でもない事に死んで行ったのです。
 彼女を生かしたのは空想です。彼女を殺したのも空想です。
 ただそれだけです。

これ本当にその通りだなって思います。自分から泥沼に嵌っていくような。一つ嘘をつけば、その嘘がバレないように更に嘘をつく、という無間奈落ですよね…終わりがないからこそ自ら死を選んで終わらせたのでしょう。

 

 

 さようなら。
 彼女のために祈って下さい。

作品の最後の文にこれを持ってくるのも綺麗な終わり方だと思いました。

来世ではユリ子が幸せな少女として生きることを願って祈る。

人をたくさん騙したユリ子だけど、根は悪い子じゃないんですよね。やっぱり。

臼杵先生もユリ子のことを憎めないんだと思います。あの明るく人に好かれる性格や、看護婦としての腕前も嘘なんかじゃなくて、彼女自身の努力なんですよ。

 

話は変わりますが、話の終盤に差し掛かって行けば行くほどボロが出てきて臼杵先生に呆れられ、酷く滑稽な様が目立ちます。こういう恥ずかしい部分があって、失敗して情けない所を晒している人間らしさがあるから、私は姫草ユリ子が好きです。なんでもかんでも出来てしまう天才看護婦じゃなくて、本当は薄汚くて裏がある嘘つきな看護婦として話が終わるのが良かったです。